他社の商標を使う時に支払うべきライセンス料の相場はお幾ら?

商標

他社が既に商標登録している言葉を商用利用したい場合、商標を既に取得している他社に対して、一定のライセンス料を支払う必要があります。

なお、ライセンス料の多寡については法律の定めがないため、個別の交渉となりますが、一体どれくらいの支払がライセンス料の相場なのでしょうか?

業界別にライセンス料の相場は変わるのでしょうか?以下、詳細を解説いたします。

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他社の商標を使う時はライセンス料を支払う必要がある

他社が商標登録を取得している商標を自社が使用したい場合、他社からその商標を使用することについて許諾を受ける必要があります。

たとえば、アップルは日本で「アイホン」という言葉を商用利用するために、インターホンの製造メーカーであるアイホン社に使用許諾を得ています。

アイホン社が商標「アイホン」(登録2382806)について商標登録を取得しているからです。

使用許諾を受けるには、通常、アイホン社に対しライセンス料を支払うことになりますが、このライセンス料は、どのように決まるのでしょうか。

また、ライセンス料に相場というものはあるのでしょうか。

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ライセンス料の支払額は法律で決まりが無い

まず、ライセンス料を幾ら支払うかについて法律上の決まりはなく、当事者の合意により決めるのが原則です。

権利者が1億円と提示し、相手がこれに合意すれば、ライセンス料は1億円になります。

しかし、商標と商品の関係をみると、商標を商品名として使用し、その商品名で商品の売上を伸ばしていくものですから、ライセンス料は商品の売上に応じて決定されるのが一般的です。

商品がたくさん売れたのは商標が貢献している部分があり、その貢献分に応じたライセンス料を支払ってね、ということです。

具体的には、その商品の年間の売上が1億円であったとすれば、1億円の○○%をライセンス料として支払います。

この○○%がどれぐらいなのかが、経営者の皆様なら気になるところでしょう。

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ライセンス料の支払はどれくらいの相場で落ち着くのか?

先ほど述べたとおり原則は当事者同士の自由な取り決めなのですが、ライセンス料は原価になりますから、会計上のバランスから一定の範囲に収まってくるのが一般的です。

約3000社を対象に、ライセンス料について特許庁が調査した報告書があります。

参考リンク:知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書:特許庁

この調査報告書(p11)によると、商標のライセンス料は、売上の1.6~2.7%で、全体平均が2.6%となっています。

iPhoneと同じ分野では、売上の2.7%となっています。

iPhoneの例をみてみましょう。

以下の記事では、アイホン社は1億円のライセンス料を計上しています。

参考リンク:アイフォーンの商標使用料は年間1億円?:東洋経済オンライン

これがすべてアップル社からのものだと仮定し、2.7%から逆算すると、ライセンス料の元となる売上は35億円になります。

さて、これを高いとみるか安いとみるかですが、iPhoneの国内売上額と比較してみれば……アップル社にとっては安い買い物と言えるかもしれません。

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業界別ライセンス料の相場〜個別案件で事情は大きく変わる

なお、ライセンス料のパーセンテージは業界によって若干の違いがあります。

先ほどの調査報告書(p11)によると、業界別に次のようになっています。

  • 化学品:2.5%
  • 加工機械:1.8%
  • 電気通信機器:2.7%
  • 照明装置:2.5%
  • 自動車:1.6%
  • 建設工事:2.1%

あまり大きな振れ幅はありません。

ただし、業界によっては、商標が売上に貢献する商品もあれば、商標が売上にさほど貢献しない商品もあります。

したがって、貢献度が高い商品を取り扱う業界についてはパーセンテージが高く、そうでない商品を取り扱う業界についてはパーセンテージが低いということだと考えれます。

要因は一つでなく複合的ですが、業界ごとに許容できる原価率が異なるというのも、パーセンテージが変わる一つの要因としてあろうかと思います。

なお、個別の事例ごとに条件は全く変わるので、もしも御社の商標を使いたいという会社が現れた場合は、弁理士など専門家と相談して交渉に望むことが賢明でしょう。

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弁理士 渡部 仁

新卒で特許事務所に勤務し、生粋の知的財産専門家として20年以上の実務経験を有しています。
2009年に現在の特許事務所を鎌倉に設立し、特許・商標・著作権を専門として地元企業の支援に力を入れています。また、IT・ソフトウェア・ビジネスモデルの特許に強く、特許権の侵害訴訟や外国での特許取得も取り扱っています。
鎌倉商工会議所専門相談員、知財総合支援窓口知財専門家などに従事し、地域の中小企業や行政に対する公的な支援にも数多く携わっています。

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【資格】
弁理士 特定侵害訴訟代理人
第一種電気通信主任技術者
情報処理技術者

【公的な役職 2016年6月現在】
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横須賀市商工相談員
知財総合支援窓口知財専門家
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島根県特許等取得活用支援事業知財専門家
川崎市中小企業サポートセンター知財専門家
神奈川産業振興センター知財専門家
神奈川県商工会連合会知財専門家
日本弁理士会関東支部神奈川委員会副委員長
日本知的財産仲裁センター事業適合性判定人候補者
日本知的財産仲裁センター調停人・仲裁人補助者候補者

【主な講演実績】
2014年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師
2016年 かわさき知的財産スクール 講師
2016年 神奈川県ものづくり技術交流会 IoTフォーラム招待講演 講師
2016年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師

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