高値で会社や事業を買ってもらえる標準化された会社が持つ6つの特徴

事業譲渡

 会社、または事業の一部を売却したいなら、なるべく高い値段で買い手にこれを売却したいと考えるのが普通です。これを可能にするためには、会社または事業が「標準化」されていると買い手に納得してもらう必要があります。そこで本稿は、会社の売却を検討する社長向けに、標準化された会社に共通する6つの特徴をご紹介したいと思います。

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標準化された会社はM&Aで高値売却しやすい

 会社、または事業の一部をM&Aにより売却したい場合、どんな経営者でも出来る限り高い値段で、これを売却したいと考えるはずです。

 私も実務を通して、このお手伝いをさせていただいておりますが、高値で売却が成立しやすい会社には1つの大きな特徴があります。

 それは、その会社又は事業が「標準化」されていることです。

 「標準化された」の意味は、組織や仕組み、それにルールなどがしっかりと存在し、これを外部に明示できることを意味します。

 反対に標準化されていない会社や事業は、買い手がつきにくく、更に買い手が付いたとしても十分な評価額を提示されにくいのが現実です。

 そこで本稿は、標準化された会社や事業が持つ6つの特徴をご紹介致します。

 将来的に売却を検討されている経営者の方は、自社が以下にあげる状況かチェックいただければと思います。

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標準化された会社で見られる6つの特徴とは?

1)会社の業務が明文化されている

 1つ目の特徴は、会社の業務が明文化されていることです。

 M&Aの売り手の中には、その会社が何をやっているのかすら明文化できていない会社が多くあります。

 社長の裁量や人脈によってビジネスの内容が変わり、何をやっているかわからない会社などがこれに当たります。

 経営ノウハウが、社長のアタマの中にしかないような会社もこれに該当するでしょう。

 対して、標準化された会社は、誰が、どんなビジネスを、どこで、どうやって展開し、どのような仕組みで、どれくらい利益を出しているか、これらをきちんと明文化できます。

2)社長の顔ではなく会社の信用(ブランド)で取引している

 標準化された会社は、社長の顔ではなく会社の信用(ブランド)で取引が出来ています。

 つまり、社長が普段から現場にいなくとも、営業マンやマーケティング担当者が、会社の優れた商品や仕組みを生かして利益を稼げているのです。

 標準化されていない会社は逆に、社長の顔のみで取引が成立するため、社長がいなくなった場合は売上がガタ落ちとなることが買い手にも容易に予想が付き、「買いにくい会社」とみなされます。

3)社長以外に事業や制度を設計できる人材がいる

 標準化された会社が持つ3つ目の特徴は、社長以外に事業設計できる優秀な社員が存在していることです。

 往々にしてこのような会社は、社員教育に大きな力を入れています。

 逆に中小企業の多くでは、出来上がった仕組みの中で作業することはできるが、その仕組みを設計したり、制度を設計できる社員がいないのが現実です。

 社員教育が十分に行われていないからです。

 社長に会社の全てのバリューがある場合、会社を買うよりも社長をスカウトしてサラリーを出したほうが、よっぽどオトクということになってしまいます。 

4)部門別の損益が各期毎にきちんと把握できている

 一部の事業を売却する場合、特に「部門別の損益が各期毎にきちんと把握できている」という条件が重要になります。

 多くの中小企業では、期毎の決算書は提出されるものの、どの部門がどれくらい利益が出ているのかがわからなかったり、挙句の果てに融資をもらうために粉飾で真っ白にお化粧している、という状況が多々見られます。

 対して、標準化された企業では、日毎、月毎、期毎で、部門別の損益がきちんとはじき出されており、外部にも説明できる状態となっています。

 会社全体を売却するにしても、買収先が会社を買収後にリストラクチャーを行う際に、部門別の損益を把握できる状態であることは、査定のプラス要因となります。

5)組織図を明確に示せる会社である

 これは、あくまでも会社や事業を売却することを前提として「標準化」されるべき条件です。

 明確な組織図を示せない会社が、ダメな会社だと言っているのではありません。

 ベンチャー企業の多くは「誰もが全ての作業に携われる」状況であり、会社を大きくしようとする際に株主の構成が変わるのも、1つの正常なあり方です。

 しかし、会社を売却する、事業を売却する際には、会社の権利関係、人員配置を含めて、会社全体を見渡せる組織図を売却先へ明確に提示できる必要があります。

 この際には、経営者の気分1つで、「アイツは◯◯へ異動」なんてことをやっているわけにはいきませんし、株主がコロコロ変わって、会社に誰がどんな権利を持っているか明示できないというのはアウトです。

6)特定分野で社長を超える能力を持つ人材がいる

 標準化された会社における6つ目の特徴は、特定分野で社長を超える能力を持つ人材がいることです。

 これは少し難易度の高い特徴ですが、非常に加点ポイントの高い標準化の特徴です。

  • 先進的な技術に対応できる能力を有する技術者がいる
  • 優秀な人材を採用してきた実績を持つ人事担当がいる
  • 金融機関との交渉において優れた実績を持つ経理担当がいる

 など、経営者頼りではなく、その企業を何らかの場面で支える人材がいれば、買い手は買収後に、その人物を核として組織を作る青絵図を描くことが可能になるからです。

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標準化された会社は買い手のリスクを軽減する

 以上が、企業や事業の一部を売却する際に、高値で売却しやすい標準化された企業の特徴です。

 考えてみれば当たり前のことですが、買い手が貴方の会社へどれだけ興味を持っていても、お金を出す際には客観的な評価を行わねばなりません。

 たとえば、売り手側の能力ある社長が続投したとしても、買い手側には、

  • 社長が他のビジネスに興味を持ち会社を去る
  • 社長が体調を崩して会社を去る
  • 買い手と社長の意見や考え方が合わず社長が会社を去る

 など、幾らでも企業(事業)継続を脅かすリスクが存在するからです。

 リスクを低減させるためには、組織や仕組み、それにルールなどがしっかりと存在し、標準化された会社として明示できる必要があるのです。

 こうすることで、買い手側はデューデリジェンスを迅速に行え、結果として評価額は高くなります。

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大原達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事・アルテパートナーズ株式会社代表取締役として、M&Aを手掛ける公認会計士です。

BBT大学、法政大学院イノベーションマネジメント科の教員も兼任しております。

大企業だけではなく中小企業にとっても、ユーザーフレンドリーな会計業界を、世界中に広めることが目標です。

M&Aの悩み(会社や事業を売りたい/会社や事業を買いたい/小規模M&A投資を検討している)があれば、お気軽にお問い合わせください。

運営サイト:
経営者のための実践ファイナンス

【現職】
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテ監査法人代表社員
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師
ビジネス・ブレークスルー大学大学院准教授
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
PT. SAKURA MITRA PERDANA Director

【職歴】
1998年10月 青山監査法人プライスウオーターハウス入所
2004年1月 大原公認会計士事務所開設
2004年6月 株式会社さくらや 監査役
2006年1月 株式会社ライトワークス リスクコンサルティング部ディレクター
2007年4月 ビジネス・ブレークスルー大学大学院講師
2008年4月 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現任)
2008年4月 アルテ公認会計士共同事務所開設 代表パートナー
2008年6月 日本マニュファクチャリングサービス株式会社 監査役(現任)
2009年4月 アルテパートナーズ株式会社設立 代表取締役(現任)
2010年7月 アルテ監査法人設立代表社員(現任)
2010年8月 日本M&Aアドバイザー協会 理事
2014年10月 日本M&Aアドバイザー協会 代表理事(現任)
2016年4月 ビジネス・ブレークスルー大学准教授(現任)

【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、日本税理士会、日本CFO協会

【資格】
公認会計士、税理士、 JMAA認定M&Aアドバイザー (CMA)

【その他】
ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA/経営管理修士(専門職) 日本CFO協会主任研究員(2006年)

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