オフィスグリコの成功要因は「食べ過ぎ」の罪悪感を考慮した設置場所にあり?!

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 今やオフィスのインフラとなりつつあるオフィスグリコ。ところで、オフィスグリコは大抵デスクからちょっと離れたスペースに設置されるのが常ですよね。アメリカにおける心理実験では、少し離れた場所に食べ物があると「食べすぎている」という罪悪感が薄れるという結果が出ています。オフィスグリコの成功を支える要因の一つには、オフィスグリコの置かれる場所も関係しているのかもしれませんね。

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オフィスグリコは既にオフィスのインフラとなりつつある

 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 突然ですが、あなたの事務所に「オフィスグリコ」は置いてありますか?

 私の所属するジェネシスコミュニケーションにはもちろん、オフィスグリコの「リフレッシュボックス」が鎮座しており、中のお菓子は光速で減っていきます(笑)

 このところ社員数が増えつつあることもあるのですが、そろそろリフレッシュボックスを増設するか、お菓子補充のための巡回頻度を増やしてもらわないと、「オフィスグリコ難民」が発生する可能性があります。

 あなたのオフィスでも同じような状況ではないでしょうか・・・

 オフィス街でもどこでも、コンビニエンスストアが至るところにある日本において、オフィスグリコがうまくいく確証はありませんでしたが、ふたを開けてみれば同事業は大成功。

 薄利多売ながら、全国で約10万事業所に導入されるなど立派に成立しています。※

 今回は、オフィスグリコが成功したシンプルな理由について、心理学の実験をご紹介しながら説明したいと思います。

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視認性と便利さが食の消費量に与える影響

 消費行動、とりわけ食についての消費行動・心理の専門家である、コーネル大学教授、ブライアン・ワンシンク(Brian Wansink)氏らは、食べ物が目につくところにある「視認性(Visibility)」と、手に取りやすさ、すなわち「便利さ(Convenience)」と食の消費量の関係を調べるため、ある実験を行ったのです。

 その実験は、チョコレートキャンディ30個入りの容器を、

  • 被験者のデスクの「上」
  • デスクの「中」
  • デスクから2メートル先の場所

 という異なる3か所に置いたキャンディが、どれくらい食べられるのかを3週間に渡って調べるものでした。

 実験結果はおおよそ予想がつくと思いますが、目に見えるデスクの上にキャンディ容器が置かれていた場合、1日平均8.7個と最も多く食べられていました。

 次いで、デスクの中の容器の場合で5.7個、一方、2メートル先の容器は3個しか食べられませんでした。

 やはり、目の前に食べ物が置かれていると、たいしておなかが空いていなくても思わず口にしてしまうのでしょう。

 ダイエットしたいなら、目につくところに食べ物を置いてはいけない、という経験則は正しいようですし、目に見えなくても、手に取りやすい便利な場所=デスクの中にあると、食べる量が増えるのもうなずけるところ。

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少し離れた場所に食べ物があると「食べすぎている」という罪悪感が薄れる

 また、もう1つ実験結果として興味深かったのが、実験後の被験者へのアンケートで、「自分はどのくらいキャンディを食べたと思うか」という自己評価をしてもらったことです。

 アンケート結果によると、デスクの上の場合で9.7個/日(実際は8.7個)と過大評価しています。目につくところにあった場合は、当然ながら自分で食べ過ぎているという自覚があるようです。

 一方、デスクの中の場合は同4.7個(実際は5.7個)とやや少な目の個数を回答しています。

 問題は、2メートル先にあった場合です。

 実際は1日平均3個食べていたのに、自己評価では1.1個と大きく過少評価しているのです。そこそこ食べていたのに、ちょっと離れたところにあると、あまり食べている実感がないようですね。

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設置場所とデスクの距離感がオフィスグリコの利用頻度を高めている?!

 さて、オフィスグリコがデスクのそばにある人はほとんどおらず、ちょっと離れたカフェスペースなどに出向く必要があるでしょう。

 お菓子を食べたくなったら問題ない距離ですし、外のコンビニよりははるかに便利です(笑)

 もし、ワンシンク教授の実験が実世界にあてはまるとしたら、オフィスグリコの利用頻度について、過少評価している可能性が高いでしょう。

 つまり、あまり食べている自覚がないけれど、実はオフィスグリコのお菓子を結構な頻度で食べている人が多いかもしれません。

 お菓子を食べすぎると罪悪感が高まり、しばらく控えようかと思うものですが、オフィスグリコの場合にはそうはならないのではないでしょうか。

 あなたとリフレッシュボックスとの絶妙な距離感が、コンスタントにお菓子を消費させ、事業としての成功につながっているのかもしれません!

 ちょっと強引な実験の解釈かもしれませんが、あなたはどう思いますか?

※オフィスグリコHPより
https://www.glico.com/jp/enjoy/contents/officeglicostory/

Photo credit: matsuyuki via Visual hunt / CC BY-SA

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松尾 順

株式会社ジゾン
コンサルティング準備室 室長

早稲田大学商学部卒。マーケティング・プロデューサー。
ニールセン・ジャパン、CRC総合研究所でマーケティングリサーチ、コンサルティングに従事した後、電通ワンダーマンで、データベース・マーケティングやCRMの企画・プロデュースを経験。さらに、ネットベンチャーの立ち上げにも執行役員として参画した。

現在は、心理学、行動経済学といった消費者心理・行動の理解に役立つ学問分野の研究を活用し、売れる商品づくり、効果的なコミュニケーション開発に取り組む様々な企業をマーケティングリサーチからマーケティング施策の企画・運営までトータルに支援している。

株式会社ジゾンでは、CMSシェアナンバーワンのソフトウェア「HeartCore」の導入に伴うマーケティングコンサルテーションを担当している。

【著書】
『ブランディング戦略―ブランディングの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ) 』誠文堂新光社
『[実務入門] 営業はリサーチが9割! 売上倍増の“情報収集”完全マニュアル (実務入門)』日本能率協会マネジメントセンター
『先読みできる!情報力トレーニング (ビジマル)』TAC出版

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