日産カルロス・ゴーン氏が業績低迷から復活を目指す経営者に贈る5つの賢言

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 先週末、日産自動車がCEO兼社長であるカルロス・ゴーン氏の退任を発表しました。長期の業績低迷から日産自動車をV字回復させたことは、誰もが知るところです。本稿はゴーン氏の偉業をたたえ、2002年に打ち出した中期計画「日産180」で、業績が長期に渡って低迷する企業が復活するのに必要な要素としてゴーン氏が語った「5つの賢言」をご紹介します。

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カルロス・ゴーン氏が日産代表退任〜その功績

 先週末、日産自動車はCEO兼社長であるカルロス・ゴーン氏(以下、ゴーン氏)の退任を発表しました。

 ゴーン氏が日本に残した功績は皆様も御存知の通りです。

  • 日本に「プロ経営者」という概念を持ってきたパイオニア。
  • 自らのコミットメント経営により日産自動車の業績をV字回復させる。
  • コミットメントした者が正当な報酬をもたらす文化を日本にもたらす。
  • 多国籍間、性別に関わらず有能な人材を登用するダイバーシティのはしり。

 など、数え切れないほど、ゴーン氏が日本の企業経営に与えた影響は大きいものでした。

 本稿ではその偉業をたたえ、ゴーン氏が2002年に打ち出した中期計画「日産180」※で、業績が長期に渡って低迷する赤字企業が復活するのに必要な要素として、ゴーン氏が語った5つの賢言をご紹介します。

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日産カルロス・ゴーン氏が業績低迷から復活を目指す経営者に贈る5つの賢言

賢言1) 単純で明快な計画を持て。

 1999年に日産自動車の社長に就任したゴーン氏は、日産リバイバルプランとして、簡潔に以下3つの目標を打ち立てました。

  • 目標1:2000年度連結当期利益の黒字化を達成
  • 目標2:2002年度連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
  • 目標3:2002年度に自動車事業の連結有利子負債を7000億円以下へ削減

 当初、簡潔かつ明快な目標をマスコミは「急進的すぎる」と批判しましたが、明快で具体的な数字で表された目標は、社内へ早期のうちに浸透し実行に移され、見事に全ての目標が達成されました。

賢言2)全てのことを一気に行わず、為すべき優先順位を確立せよ。

 ゴーン氏が社長就任後、一番最初に行ったこと、それは大規模なリストラです。

  • 2万人強の人員リストラ
  • 取引先の50%カット
  • 国内生産台数を30%強削減

 組合からの強烈な反発や、それを伝える報道のバッシングは壮絶なものでしたが、ゴーン氏はこれに臆すること無く、まずは優先順位の高いリストラクチャーを情に流されず実行します。

 これを達成し黒字化を果した後に、ゴーン氏は積極的な新型車の導入を行うと同時に、自らCMへ出演するなど、事実上の日産トップセールスマンとして動き始めます。

 ゴーン氏はこれを、「コスト削減によって得られた資金を、将来の利益ある成長に向けて投資する。」とも述べています。

 嫌われることを厭(いと)わず、優先順位の高いことから実行したその姿を批判する人は、今なら殆どいないはずです。

賢言3)トップはキチッとコミットメントを果たすべし。コミットメント無しにリストラはできない。

 言うまでもありませんが、ゴーン氏が日本に広めた「コミットメント経営」、これは就任当初から行われました。

 日産自動車の社長就任会見で、日産リバイバルプランを打ち出したゴーン氏は、目標を達成できなければ、自らはもちろん経営陣が退任すると表明しました。

 従業員たちは、これに発奮します。

 とかく多くの企業ではコミットメント経営が、「現場に責任を持って行動させる」という勘違いな考え方で浸透していますが、ゴーン氏のそれは間逆なもので、自らがリスクを持つことをうながすものでした。

賢言4)危機の時ほど社内の円滑なコミュニケーションを保て。

 ゴーン氏は従業員たちとの直接対話を重視しました。

 日産自動車の社長に就任直後の社内挨拶で、倒産の危機的な状況に陥った日産を立て直す方針を、全世界の従業員に同じ時間帯に直接聴かせるため、工場ラインのストップを命じたのは有名な話です。

 多国籍の人材間で円滑なコミュニケーションを取るために、社内公用語を英語にはしましたが、フランスから日産に派遣される社員には「フランス人として日本に行っても、組織改革に成功する可能性は1%も無い」と説き、日本人のやり方を尊重した円滑なコミュニケーションを通じ、良好な人間関係を構築するよう命じました。※2

賢言5)人を選び、信頼して責任を与えよ。

 ゴーン氏は就任から間もなくして月に1回、「NAC会議」という、部門長に推薦されたポテンシャルの高い30歳から45歳までの人材を、自らが目利きする会議を開催するようになりました。※3

 この会議を通過した人材には、厳しくて重要な、本人にとって未知の領域での仕事を積ませ、これを通過したものが、将来の幹部候補、経営陣として登用する仕組みを作りました。

 ゴーン氏は人材を経営幹部として育てるには10〜15年の期間が必要と説きますが、実際に社長就任から18年が経過した今、ゴーン氏は社長退任の言葉として、「この18年間育ててきた日産のマネジメント層には、同社の事業および戦略的な目標を達成する上で求められる能力と経験があると信じています。」と述べました。

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倒産寸前から這い上がった当事者の言葉は重い

 ゴーン氏は1999年から18年続けた社長の座から降りる一方、代表権のある会長に専念する形で、引き続き日産自動車の経営に関わりますが、その活動領域は、日産・ルノー・三菱自動車のアライアンスを更に有効なものとする活動へ移ります。

 3社のアライアンス規模は、トヨタやフォルクスワーゲンの規模に匹敵するものとなりましたが、当初社長として派遣された日産は、倒産寸前の赤字会社であり、日本の60%以上の赤字企業と何ら変わらぬ状況にあったことを忘れてはなりません。

 経営には絶対的な成功モデルなどありませんし、経営の立て直しが必要な場合は、個々がおかれた状況で対応が全く変わります。

 しかし、困難な状況におかれたゴーン氏が、実践を経て生み出した賢言は重く、経営者の誰しもが学べるものと言えるでしょう。

日産自動車2001年度決算プレビュー

※2カルロス・ゴーン経営を語る P255より

※3カルロス・ゴーンの「答えは会社のなかにある」―会社を変えたリーダーの再生と復活の語録 P328より

Photo credit: Elbilforeningen via VisualHunt / CC BY

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