「休憩時間は1時間」が日本社会に浸透したワケ〜休憩時間45分はOK?

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 昨今の長時間労働による過労死問題などが影響し、多くの企業で労働時間の短縮を如何に図るかが大きなテーマとなり始めています。そこで、1時間休憩を少しでも縮めて時間外労働を減らそうとしている企業が増えています。ところで日本の「1時間休憩」という企業の慣習はなぜ生まれたのでしょうか?休憩時間を短縮することに意味があるのかも含めてご説明いたします。

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休憩時間を短縮して残業を減らすことを検討する経営者が増える

 昨今の長時間労働による過労死問題などが影響し、多くの企業で労働時間の短縮を如何に図るかが大きなテーマとなり始めています。

 とはいえ、労働の質を上げながら、定時で従業員に残業させることなく退社してもらうには、業務の効率化のみならず、あらゆることに充てる時間について、短縮の余地が無いか検討せざるを得ません。

 現在当たり前とされている「8時間労働1時間休憩」も、時間短縮対象の一つとして注目されています。

 単刀直入に言いますと、「8時間労働1時間休憩」を「8時間労働45分休憩」という形で、休憩時間を短縮することで、残業を減らすことを検討する企業が増えているのです。

 しかしながら、労働時間の短縮は社員からの反発を招く可能性がありますし、もっと言えば労働基準法に照らし合わせて適法なのか?という疑問も沸き起こるかもしれません。

 実際に、私の元にも経営者の方から、休憩時間の短縮是非について、相談をいただくケースが増えておりますので、この問題について回答したいと思います。

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休憩時間を1時間から45分に減らすのは法的にも心理的にも極めて不合理

 労働基準法では、休憩時間を労働時間の長さによって定めています。

 具体的には、1日の労働時間が6時間以下の場合には休憩時間を与える必要が無く、6時間超え8時間以下の場合は最低45分間、8時間を超える場合には、最低1時間の休憩時間与える必要があります。

 つまり結論から言えば、1日の労働時間が8時間であれば休憩時間を45分間に短縮することは、何ら法的な問題を持ちません。

 しかし、ここで2つの点に注意する必要があります。

 まず、労働時間ですが、これは、あくまで雇用契約上の労働時間でなく、実際に働いた労働時間が基準となります。

 たとえ雇用契約上、1日の労働時間が8時間であっても、極端な話をすれば1分間でも時間外労働をさせた場合には、1時間の休憩時間を与える必要があります。

 更に2つ目の注意点ですが、休憩時間は労働時間中に与える必要があり、労働を終了してから休憩を与えることは法律上認められていません。

 つまり、休憩時間を45分間に変更すると、休憩時間の管理に不都合が出る場合があるのです。

 休憩時間を45分に短縮する場合は、必ず1日の労働時間を8時間と定め、時間外労働が100%無いの状態を作らねばならないのです。

 もし1分でも時間外労働が必要となった場合は、休憩時間を更に15分間与えねば、それは法令違反となります。

 心理的な面から考えても、従業員の側からすれば時間外労働を終えて早く帰宅したいのに、休憩を取るため15分間余計に会社に残らなければならない、という状況はモチベーションダウンにしかなりません。

 このように考えると、休憩時間を1時間から15分短縮して、45分とする形の時間短縮は極めて不効率と言えるでしょう。

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「休憩時間は1時間」が一般的に浸透した理由

 さて、ここで疑問となるのが「なぜ日本では休憩時間が1時間というのが一般的な常識となっているのか?」という問題です。

 労働基準法で定められている休憩時間と労働時間との関係は、1日の労働時間が8時間を超える場合には、最低1時間の休憩を与えれば良いとされているのみです。

 1日の労働時間が何時間に及んでも、1時間の休憩時間を与えてさえいれば、法律の基準を満たしていることとなります。

 たとえ、1日の労働時間が8時間であっても、最初から休憩時間を1時間と定めておけば、時間外労働が何時間に及んでも、休憩についての時間管理は必要無くなることになります。

 ですから、休憩時間に関しては最初から1時間と規定する方が、労務管理上において管理がしやすい。

 これが、日本で休憩時間が1時間というのが一般的な常識となった所以です。

 なお、休憩時間は必ずしもまとまった時間である必要は無く、分割で与えても問題ありません。

 例えば、1時間の休憩を午前10時から5分、昼食休憩を45分、午後3時から10分という形で与えても法律上全く問題ありません。

 経営者にとっては、意味の解釈が様々に出来る点でメリットがあります。

 最後になりますが、今後AIの進化などにより、標準化された仕事が更に効率的に行なわれるようになった時、人間に求められる仕事の質も劇的に変わっていくはずです。

 人間の労働価値が更に高まっていくことは、すなわち、企業はもちろん、従業員の淘汰(採用時を含め)につながるでしょう。

 筆者本人としては、これらが実現する時に、今のような労働時間で起きる紛争は少なくなって行くと考えています。

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松本 容昌

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【経歴・実績】

1966年生まれ 静岡県浜松市出身

立教大学経済学部卒業後地元企業で不動産営業、保険代理店営業に13年間従事後。

平成11年社会保険労務士試験合格後、平成13年社会保険労務士事務所「オフィスまつもと」を設立。

開業後、一貫して労務コンサルティングと助成金業務を中心に業務展開を行ってきました。

多種多様な企業の様々な労務相談に応じており、数多くの労務トラブルの解決に尽力してきました。就業規則の作成実績数は、100社以上に及びます。

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労務管理セミナー 

「会社を守るための就業規則作成講座&知らないと損をする労務トラブルを防ぐ5つのポイント」
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平成21年2月 
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平成21年10月 
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また、助成金業務に関しては、これまで取扱った助成金の種類は20以上で、申請企業数は100社以上に及びます。

特に、平成22年以降は、独立・開業時助成金を活用しての独立・開業支援を主力業務として、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、岐阜県、滋賀県にわたって独立・開業支援業務を展開。

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