科学雑誌ニュートンが出資法違反&民事再生~預かり金と出資金の違い

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 日本の大衆向け科学雑誌のパイオニア『ニュートン』を発行するニュートンプレスが、民事再生を申込んだことが話題となっています。このニュースの前に同社の「預り金受け入れ」による出資法違反も露見していることから、出資法による預り金と出資金の違いについておさらいしてみましょう。

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ニュートンの民事再生&出資法違反が話題に

 日本の大衆向け科学雑誌のパイオニア『ニュートン』を発行するニュートンプレスが、2月20日(月)に東京地裁へ民事再生手続きの開始を申し込みました。

 売上はピーク時の半額となる12億円、負債総額は20億円という非常に厳しい状況での経営が続いていました。

 特筆すべきは、負債のうち約10億円強が一般人(主に定期読者)からのものであり、その供出形態が出資ではなく、預かり金としての性質が認められるものだったことです。

 これを受けて同社では、出資法違反により元代表が逮捕される事態も起きています。

 そこで本稿は、出資金と預り金の違い、預かり金を受け取る行為はなぜ出資法で禁止されているのか?という2つの点についておさらいしたいと思います。

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出資法で見る出資金と預かり金の違いとは?

 まず、出資金と預り金について、出資法に基づく両者の違いを知るため、意訳して定義を見ていきましょう。

出資金とは?

 ある事業を運営するために使うことを目的として「出資者が提供したお金」のことを指します。

 財務諸表上では、「資本金」もしくは「投資有価証券」として計上されるお金です。

預り金とは?

 預かり金とは、不特定かつ多数の者から受け入れた金銭を指します。

 預かり金の受け入れとみなされる行為として、

  • 1)預金、貯金又は定期積金の受入れ
  • 社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わず1)と経済的同質性を有するもの

 が対象となります。

出資金と預かり金の違い

 出資金は原則、出資者に対して金銭その他の保全・返還義務が無く、預かり金には預けた不特定多数者に対して、保全・返還義務が生じます。

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企業による預かり金受け取りが禁止される理由

 ここまで見ていただくと、預り金は出資金と比較して縛りが大きいことが理解できると思います。

 預かり金を受け取る側には、その金銭扱いに高度な資力と能力が求められ、この性質を逆手に取って詐欺事件などが起こらぬように制度が整えられてます。

 従って、預かり金を受け取ることができる者は、

  • 銀行
  • 信用金庫
  • 労働金庫
  • 農業協同組合

 などに制限され、業として預り金をする者以外が、預かり金を受け取ることを出資法2条は固く禁じています。

 記憶に新しいところでは、「円天事件」などが、元本保証と高金利の返還を謳いながら、その実質が免許を持たない預かり金の受取行為だったことから、出資法違反で取り締まられています。

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果たしてニュートンに同情の余地はあるのか?

 ここでニュートンの話に戻りましょう。

 ニュートンの場合は、定期読者から預かり金を受け取っていたと報道にはあります。

 もしかすると、定期読者はファンとして、応援の意味を込めて善意でニュートンにお金を預けていたかもしれません。

 であれば、一見すると同逮捕は同情に値するものと見る趣もあるようです。

 しかし、実際にはニュートンが資金を読者から預かった際、同社の担当は、

  • 不特定多数の人々に
  • 元本を保証
  • 年5%の金利支払いを約束

 という説明を行っている点で、出資法に明確な違反行為となる、「預り金」の受け入れを行っていることが明らかです。

 雑誌を発行し続けることで、社会的使命を果たそうとした点は理解できないこともありません。

 しかし、その資金供給方法があまりにもずさんだった点では、同情の余地があるとは言えないでしょう。

 同社は今後、10年の期間を設けて被害者への自主弁済に取り組むとしています。

 転じて私達は、「金融機関以外にお金を預けて、元本保証と利息払いが行われる確証などどこにも無い。」「預り金という形で企業にお金は集められない。」ということを、肝に銘じる必要があります。

Photo via Visual hunt

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