ザッカーバーグって言ったら誰を思い出す?「利用可能性ヒューリスティック」の罠

マーケティング

 人は自分の経験してきたことや知っている知識の中で、目の前の対象物を把握したがる、利用可能性ヒューリスティックといい性向を持ちます。人間にとって考えることや想像することは重労働なのです。たとえばネット業界で有名なザッカーバーグさんと言えば貴方は誰である可能性が高いと思われますか?複雑な人間の心理に迫ります。

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マーク・ザッカーバーグを紹介すると言われたらどうするぅ?

 あなたはある日、とても信頼する友人から、彼の知人を紹介してもらうことになりました。

  「やぁ◯◯(あなた)。今度とても優秀な友人を紹介しようと思うんだけれど、どうかな?彼の名はマークザッカーバーグだ。かなり頭の良い人物で、インターネットのSNSでは常に友達申請が絶えぬ人気者だよ。」

 さて、直感でパッと考えてみて、皆さんはマーク・ザッカーバーグが以下にあげる、どちらの人物である可能性が高いと思いますか?

  • 1)フェイスブックの創業者であるマーク・E・ザッカーバーグ
  • 2)インディアナポリスに住む弁護士のマーク・S・ザッカーバーグ

 いかがでしょう?

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自分の経験と知識で判断したい「利用可能性ヒューリスティック」

 先程の問に対する答え、ほとんどの方は1)のフェイスブック創業者であるマーク・E・ザッカーバーグである可能性が高いと考えたことでしょう。

 ひっかけ問題だと考えた方は、根拠は無いけれど、2)インディアナポリスに住む弁護士のマーク・S・ザッカーバーグである可能性が高いかもしれない、と考えたのでは?

 答えは「どちらの人物である可能性も50%、半々」です。

 実は、2人のザッカーバーグはどちらも実在の人物で、しかも、あなたの友人が語った特徴、

  • とても優秀
  • マーク・ザッカーバーグという名前
  • SNSで人気者

 という条件を両者ともに兼ね備えています。

 マーク・S・ザッカーバーグさんは、フェイスブックの創始者であるマーク・E・ザッカーバーグと同姓同名、インディアナポリスに住むとても優秀な弁護士で、同姓同名であるがゆえに「I am Mark Zuckerberg」というサイトまで立ち上げ、1日に500人から友達申請をもらうほどSNS内で人気者です。

節約社長
「I am Mark Zuckerberg」

 この事実を事前に知っていれば、皆さんも答えが「50%の確立」と言われて、当たり前のように理解できることでしょう。

 しかし、先入観なく最初の情報だけ与えられた時、殆どの方は友人が語る特徴から、紹介される知人はフェイスブックの創始者だと思ったはずです。

 そして、それはとても自然なことです。

 なぜなら、人間は自分が知っていることや経験を優先した意思決定を行いたがる、節約思考を有しているからです。

 行動心理学で「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれるこの法則は、人間にとって想像すること、考えることが、如何に重労働であるかを示します。 

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「利用可能性ヒューリスティック」の持つ二面性

 「利用可能性ヒューリスティック」はビジネスの多くの場面で利用されています。

 たとえば、CMのキャッチコピーで「玄関開けたら」のあとは?

 そう、「サトウのごはん」ですよね。(古いでしょうか?)

 「ピアノ売ってちょ〜だ〜い♪」と言えば?

 こちらは「もっともっとタケモット」の「ピアノのたけもと」を思い出すのではないでしょうか?

 なぜこれらの企業名をソラで言えるのか?それは視聴者が何も考えずに企業名を覚えられるよう、CMが考え抜いて作られているからです。

 このように、「利用可能性ヒューリスティック」という人間の「考えたくない」性向を知り、上手にマーケティングへ活かすと、効率的に消費者への認知を獲得することが可能になります。

 一方で経営者にとっては、利用可能性ヒューリスティックがマイナスに働くこともあります。

 たとえば、貴方が経営者で、自分の信頼する人から、ある人物を社員とするよう勧められたとします。

  「彼は小さい頃から寡黙だったが、絵が上手で勉強熱心な人物であり、若いのにカリスマ性もある。友人たちは皆彼にベタ惚れだ。今のうちに社員にして抱え込んでは?」

 一回聞いただけだと、紹介してもらう若者はとても優秀な人物に感じます。しかも信頼する経営者の紹介です。

 しかし、もう一度彼の特徴を読み返してください。

 実はこの人物の特徴、若き日のアドルフ・ヒトラーのことを指すのだとしたら?

 画家を志した寡黙な青年は大学進学に失敗、その後に選民思想にハマり、若者達のカリスマとなる。やがて彼が年を経てナチス・ドイツの独裁者として、世界を大殺戮の恐怖に陥れたことは皆さんも知るところ。

 一面しか見ていないのに、ヒトラーを知らずのうちに評価するのはなぜでしょうか?

 それは、「真面目な人が良い」「カリスマ性があったほうが伸びる」「寡黙な方が口出ししない」など、自分が人を雇用してきた豊富な経験をもとに、容易に考えうる可能性の中(一面)だけで人を評価してしまうからです。

 このように、人事や財務判断において、経営者が幾らかの人脈や経験をもとに、なるべく想起しやすい方向で考える傾向から脱すれなくなると、悪い方向に利用可能性ヒューリスティックがはたらく場合があります。

 つまり、会社から変化が無くなるのです。

 これを防ぐには、イレギュラーなこと、起こっている変化に柔軟に対応するべく、自分の経験を常にゼロベースに戻して、客観的に起こりうることについて考え抜き、必要な場面では自らが大胆に動くしかありません。

 人間の心理とは本当に複雑で奥深いものです。

Photo credit: Alessio Jacona via Visualhunt.com / CC BY-SA

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