認知症に乗じた販売も〜高齢者への健康食品の電話勧誘販売「(株)たんぽぽ」に特商法の業務停止命令下る

時事

 シニア層をターゲットとしたビジネスが次々と誕生していますが、その営業方針について、高齢者の弱みにつけ込むモラルの欠けた会社があることも事実です。1月18日には健康食品の電話勧誘販売を行っていた(株)たんぽぽ(東京都台東区)が、特定商取引法違反で6カ月間の電話勧誘販売業務の一部停止を命じられました。その違反行為は卑劣なものです。

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健康食品の電話勧誘販売(株)たんぽぽに特商法業務停止命令

 日本が高齢化社会へ移行すると同時に、日本の金融資産の半分は60代以上の高齢者が保有している現実があります。

 このような背景を元に、シニア層をターゲットとしたビジネスが次々と誕生していますが、その営業方針について、高齢者の弱みにつけ込むモラルの欠けた会社があることも事実です。

 関東経済産業局は、1月18日、健康食品の電話勧誘販売を行っていた(株)たんぽぽ(東京都台東区)に対し、特定商取引法違反で6カ月間の電話勧誘販売業務の一部(新規勧誘、申込受付及び契約締結)停止を命じました。※

 特定商取引法とは、通信販売や訪問販売等、消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止するとともに、消費者の利益を守るための法律です。

 消費者庁は併せて、『注文した記憶のない商品の送り付け』注意喚起チラシも処分と同日に公表しています。※2

 本稿は、(株)たんぽぽが業務停止命令を受けた営業行為を、法律に照らし合わせながらご紹介します。

 シニア層をターゲットとしたビジネスを実践されている方は特に、その内容をチェックしておくことをお勧めいたします。

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(株)たんぽぽが処分を下された5つの違反行為〜認知症の高齢者等の判断力の不足に乗じた販売も

 (株)たんぽぽに対して下された本処分は、特定商取引法第69条第3項の規定に基づき、消費者庁長官の権限委任を受けた関東経済産業局長が実施したものであり、概要は以下の通りとなります。

取引概要と商品名

 健康食品等の電話勧誘販売

 商品名:「乳酸菌生産物質時間」、「贅沢な黒酵母ゼリー」、「愛花」、「おばあちゃんのらくらく歩行ベルト」

認定した違反行為

 電話勧誘販売による本件商品の売買契約の締結について勧誘するに際しての、

  • 「再勧誘」
  • 「書面の交付義務(記載不備)」
  • 「商品の効能及び購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについての不実告知」
  • 「老人等の判断力不足に乗じ契約を締結させる行為」

 各違反行為の詳細は以下のとおりです。

(1)再勧誘(法第17条)

 同社は、本件商品の売買契約の締結について勧誘するに際し、消費者が「サプリメントは、結構です。」などと、本件商品の売買契約を締結しない旨、明示的に意思を表示したにもかかわらず、再度電話をかけるなど継続して勧誘を行っていた。

(2)契約書面の記載不備(法第19条第1項)

 同社は、本件商品の売買契約を締結した際に、消費者に対して交付すべき当該売買契約の内容を明らかにする書面に記載不備があった。

(3)商品の効能についての不実告知(法第21条第1項第1号)

 同社は、本件商品の売買契約の締結について勧誘するに際し、「血圧だけでなく糖尿病にも効く。薬も必要なくなり、医者に行かなくても良くなります。」などと、あたかも病状の改善の効能があるように告げており、商品の効能について不実を告げていた。

(4)判断に影響を及ぼすこととなる重要なものの不実告知(法第21条第1項第7号)

 同社は、本件商品の売買契約の締結について勧誘するに際し、消費者にとって注文した覚えのない商品を「あなたが注文した健康食品が出来ましたのでこれから送ります。」と消費者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて不実を告げていた。

(5)判断力不足便乗(法第22条第3号)

 同社は、本件商品の売買契約の締結について勧誘するに際し、認知症の高齢者等の判断力の不足に乗じ、本件商品の売買契約の締結をさせていた。

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高齢者の強引な電話勧誘販売での苦情相談減らず

 平成25年度に急増した電話勧誘による「健康食品の送り付け商法」に関する高齢者の苦情相談は、翌年度にはほぼ以前の件数に戻りました。

 最近は60歳代以下の幅広い年齢層に対する、ネット通販での定期購入トラブルにシフトしてきています。

 しかし、70歳以上の高齢者においては、電話で「強引」に勧誘を受け、「代引配達」で料金を支払ってしまったことに関する相談や、申し込んでもいないのに「無断契約」され、商品を送り付けられたという「ネガティブ・オプション」の相談も依然多い状況です。

 判断に影響を及ぼすこととなる重要なものの不実告知や、認知症の高齢者の判断力不足を利用した売買契約に関しては、消費者契約法の観点からも注意が必要です。

※参考

特定商取引法違反の電話勧誘販売業者【(株)たんぽぽ】に対する業務停止命令(6か月)及び指示について(経済産業省北海道経済産業局 平成29年1月18日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/pdf/170118kouhyou_1.pdf

※参考2

『注文した記憶のない商品の送り付け』注意喚起チラシの公表について
(消費者庁 平成29年1月18日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/pdf/170118kouhyou_2.pdf

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久保 京子

株式会社 フィデス 代表取締役社長

広告表示のコンプライアンスや消費者視点の顧客サービスを重視した、ネット通販マーケティングのコンサルティング会社です。

景品表示法や医薬品医療機器等法(旧薬事法)などの広告法務や、顧客満足を高める顧客対応など、ネット通販の「守り」の部分をバックアップします。

広告表示規制が強化される中、違法表記は企業の信用やブランド価値の低下など、致命的な事業リスクになりかねません。
また、拡散力が飛躍的に高まったネット時代のカスタマー対応は、ダイレクトに売り上げとコストに影響を与えます。

カスタマー対応はもとより、広告の違反基準となるのは、サービスの受け手である一般消費者目線です。
常に消費者目線を意識することが、事業のリスクマネジメントの基本となります。

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取得資格
内閣総理大臣及び経済産業大臣事業認定資格 消費生活アドバイザー
※消費者と企業の懸け橋として、企業の消費者志向経営をサポート。
 消費者庁の法執行専門職員(景表法やJAS法などの違反被疑事案の調査補助を行なう)や、
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サービス内容
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