社員に頼まれた「給料の前借り」⇒前渡金と貸付金どちらで対応する?

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 「社長、本当に申し訳ないんですが、今月何かと入用で…なんとか給料の前借りお願いできませんか!」このように、従業員が会社にお金を無心するというのはよくあることです。経営者の貴方が従業員に協力しようとした場合、工面してあげるお金は前渡金と貸付金のどちらで処理すればよいでしょうか?それぞれで気をつけるべきポイントと共にご紹介します。

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社員からのお金工面依頼〜給与前渡にした際の問題点とは

 年末年始で何かとお金を使った社員から、「金欠につきお金を工面してほしい」と言われたことはないでしょうか?

 年末年始に限らずとも、無計画にお金を使ってしまって給料日までもたない人や、家族・友人等には頼れない人、金融機関にNGを出された人など、従業員が会社にお金を無心するというのはよくあることです。

 金額が少額であれば、通常はいわゆる給与の前借りとして処理することが一般的でしょう。

 支払ったときには前渡金として処理し、給与支給の際にその分を差し引いて支払います。

 しかし、好意で許可したこの前借り、金額によっては労働基準法上注意が必要となるケースがあります。

 法律上、給与支払日より前に支払う金額というのは「既往の労働に対する賃金」、つまりその日までの働いた分のみで、それ以上は支払の対象にならないということです。

 もしも未就労分まで前払いし、その分を給与天引きすると“これから働くことを前提にして給与を先渡しする=強制労働”として労働基準法違反となってしまいます。

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前渡に問題がある場合は貸付金として支払う

 そこで、金額がある程度以上になるようなら、社員へ渡すお金を貸付金として取り扱うこととなります。

 会社と従業員の間で金銭消費貸借契約を結び、契約に基づき従業員は会社に返済していきます。

 返済額は給与天引きされることがほとんどですが、直接会社に支払う形でも問題ありませんし、もちろん返済期間中に会社を辞めることもできます。

 但し、契約に返済するまで会社を辞められない等の規定があると、実質的に強制労働とみなされる恐れがあります。

 貸付金とする場合、問題となるのは利息です。

 無利息や低金利ではその利息(差額)部分が給与として課税されてしまいます。

 この点、所得税法ではその利率が貸付日の年の特例基準割合(H27年以降1.8%)以上であれば給与課税せず、それに満たない利率の場合には次の特別な3つの場合を除いて、貸付利率との差額を給与課税すると規定しています。

  • ①災害・病気等で臨時に多額の生活資金が必要かつ利率・返済期間が合理的な場合
  • ②会社の平均調達利率等、合理的な貸付利率の場合
  • ③上記以外で、利息の差額が年間5,000円以下の場合

 なお、貸付のために銀行等から借り入れをした場合には、その借入利率が基準となります

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前渡も貸付も気をつけるべきは労基法との兼ね合い

 社員にお金を供与する場合は、善意とはいえ労働基準法に気をつけながら、給料の前払いにするのか貸付にするのかを判断する必要があることを覚えておきたいですね。

 最後に一つ気になることがあります。社員にお金の工面を依頼された時、会社側に支払の義務は生じるのでしょうか?

 結論から言うと、社員にお金を貸す貸さないは会社の任意ですので、お願いされたからといって応じる義務は会社には一切ありません。

 貸付をした直後に逃げられたようなことがあれば目も当てられませんので、相手を見ながら慎重に判断しましょう。

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