分社経営は「組織論」と「税務論」の双方でメリット・デメリットを検討せよ

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 会社の経営が順調であるほど、会社の規模は大きくなっていきます。成し遂げられることが増え、そこから糧を得る仲間が増え、会社の規模が大きくなる事は、経営者にとってはこの上ない幸せです。しかし、これに伴って、「組織論」「税務論」で様々な問題が生じます。これを踏まえて多くの企業が行っているのが分社経営です。

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分社経営がもたらす組織論上のメリットとは?

 会社の経営が順調であるほど、会社の規模は大きくなっていきます。

 成し遂げられることが増え、そこから糧を得る仲間が増え、会社の規模が大きくなる事は、経営者にとってはこの上ない幸せです。

 しかし、あまりにも会社の規模が大きくなりすぎると、そこで働く人間による諍いが起こりやすくなってしまいます。

 10人くらいの頃は寝食を共にし、忙しかったけれど楽しかった。

 それが20人、30人…100人と社員が増えていく毎に分派が起こり、かけがえのないパートナーまでが袂を分かっていく。

 企業が拡大していくと、これらの事態はまず避けることが難しくなり、働く人間が本来持つべき労働意欲の低下を招き、いずれ会社の停滞を招く潜在リスクとなります。

 この組織理論で起こるリスクを抑えながら、会社の成長を持続するために、多くの企業が実施してきたのが分社経営です。

 例えば、ソフトバンクは2016年12月現在、ホールディングスとして子会社を実に739社抱えています。

 ソフトバンクも事業単位で分社化し、それぞれの会社における目的や成果を明確にし、巨大化することで生じる分派を防ぐべく、強力なトップが理念を共有することで成長し続けています。

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分社経営がもたらす税務論上のメリットとは?

 分社には上記で延べたように、組織論において大きなメリットを持ちますが、これ以外にも税法上の2つのメリットも有します。

 1つ目は、軽減税率の適用が可能になる点です。

 一般的に資本金が1億未満の中小企業では、課税所得が800万円までに軽減されています。

 そして法人事業税に関しても、課税所得が800万円までであれば、通常よりも低い15%の税率となるのです。

 つまり、一つの会社に利益を集中させるよりも、会社を分けて軽減税率を活用した方が、トータルで支払う税金を抑える事が出来るわけです。

 また、課税売上高が1,000万円以下の会社では、消費税を納税する必要がありません。

 その為、1つの会社を分社した場合、どちらかの会社の課税売上高を1,000万円以下にすれば、消費税の節税にも繋がるというメリットがあります。

 分社による2つ目の税法上のメリットは、交際費で生じます。

 資本金1億円以下の企業は、800万円まで交際費を損金とすることが可能ですが、分社を行った場合、それぞれの会社で800万円まで交際費を損金として計上することが可能になります。

 1つの会社なら800万円までしか損金算入できないところ、2つの会社なら合計1,600万円まで損金算入が可能になります。

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分社経営がもたらす組織論・税務論上のデメリットとは?

 このように、分社は会社経営を行う上で、成長を促進する起爆剤となると共に、メリットが豊富な節税対策としても実行されています。

 しかし、分社には当然ながらデメリットも存在します。

 まず1つ目のデメリットとして、業務における負担の増大があげられます。

 これまで1つの会社で行ってきた事を、2つの会社で行うようになるのですから、業務の負担が大きくなるのは当然と言えるでしょう。

 特に、バックオフィスの増大は、直接的な利益を産まない固定費の増大要因となります。

 これを防ぐために、大企業の中には中間持株会社を設置し、バックオフィスを共有しているケースも多々見られます。

 続いて2つ目のデメリットは、均等割の負担です。

 均等割は、赤字であれ黒字であれ、どのような会社であっても、最低7万円の支払いが求められます。

 つまり分社すれば2社で14万円の支払いが、絶対に必要となるという事です。

 分社経営を検討する場合は、こうした「組織論」「税務論」の双方向からメリット・デメリットを把握した上で、実行するか否かを判断する必要があります。

Photo via VisualHunt

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