黒字経営だったのに今期は赤字。そんな時に備えて覚えておきたい2つの税金抑制策

節税

 ずっと黒字経営で真面目に税金を支払ってきたけれど、今期はまさかの赤字。そんな時は、なんとかして税金の支払いを抑えたいと考えるものです。そこで本稿は、いきなり赤字経営に陥った時に利用できる、税金抑制策を2つご紹介します。前期と翌期以降で会社の利益額(見込み額)を比較検討し、自社にあった税金抑制策を2つのうちから検討しましょう。

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ずっと黒字経営だったのに今期は赤字。税金を抑えられないだろうか?

 世界各国で社会情勢が不安定になり、経済情勢も不透明感が増しています。

 そんな中、これまでずっと黒字経営で続けてきた会社が、赤字に転落してしまうというケースもよくあります。

 「黒字経営で真面目に税金を支払い続けてきたのだから、今期は何とか税金の支払いを抑えたい。」と考える経営者の方もいることでしょう。

 そこで本稿は、いきなり赤字経営に陥った時に利用できる、税金抑制策を2つご紹介します。

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赤字期の税金抑制策1:欠損金の繰越控除

 まず、会社で赤字を出してしまった場合、税務上青色申告を選択していれば、最長で9年(H29/4/1以降開始事業年度分は10年)損失の繰り越しができます。

 これは、欠損金の繰越控除といい、今期の赤字と来期以降の黒字が相殺できる規定です。

 例えば、前期200万円の赤字(簡易化のため会計上の損益=税務上の損益と仮定)を計上したとします。

 今期に100万円の利益が出たとしても、前期の赤字200万円と相殺されて利益が0円となれば、税金も0円、さらに100万円-200万円=△100万円を翌期に繰り越すことが可能です。

 また、翌期に50万円の利益が出ても、繰り越された△100万円と相殺されてまた税額は0円となる、という仕組みです。

 但し、中小法人等以外の会社(資本金1億円超の会社など)には年度ごとに相殺金額に制限が設けられています。

 例えば、H28/4/1以降開始事業年度では利益の60%、つまり100万円の利益であれば、そのうち100万×60%=60万円までしか相殺できず、残りの40万円には税金がかかってしまいます。

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赤字期の税金抑制策2:欠損金の繰り戻し還付

 中小法人が赤字になった場合は、繰越控除の他にもう一つの税金抑制策が用意されています。

 「欠損金の繰り戻し還付」と呼ばれる規定です。

 この規定は、青色申告である確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合、欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度に繰り戻して、法人税額の還付を請求できるというものです。

 例えば、前期に利益100万円、当期に損失200万円が発生した場合、前期の利益100万円に当期の損失を繰り戻して相殺し、前期に支払った税金の還付を受けることが可能です。

 相殺しきれなかった損失は、上記の繰越控除の対象となるので、翌期以降に繰り越されます。

 但し、欠損金の繰越控除と違い、この規定は法人税のみが対象で地方税は対象外です。

 地方税は全額が欠損金の繰越控除となるので、繰り戻し還付を選択すると、法人税と地方税で控除対象の繰越額が異なることになります。

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欠損金の繰越控除と欠損金の繰り戻し還付でオトクなのはどっち?

 それでは、この2つの制度はどちらがオトクなのでしょうか?

 繰越控除では、繰り越せる年数に制限があります。

 その期間中に黒字化する見込みがない、あるいは発生した損失が大きすぎて期間中に使いきれない、という時には「繰り戻し還付」を選択したほうがよいでしょう。

 また税率の違いも考慮する必要があります。

 中小法人では利益(所得)額が800万円というラインで法人税の税率が変わり、800万円を超えた金額部分の税率が高くなります。

 高い税率の部分で適用できれば、支払う税金が少なく或いは戻る税金が多くなります。

 また制度そのものの改正で、税率が変更されることがあるのも忘れてはいけません。

 どちらを使うか、前期と翌期以降で会社の利益額(見込み額)を比較検討することが必要でしょう。

 以上を踏まえ、まさかの赤字経営に陥った際の税金抑制策として、お役立ていただければと思います。

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