目に見えないコストの削減に役立つ「活動基準原価計算」とは?

 目に見える範囲のコスト削減はとても簡単に行なえます。例えば、110円で購入していたものを100円で購入するといった具合です。ところが、110円で購入していたものを100円にする時には人件費がかかります。これが、目に見えるコスト削減より高くついては本末転倒です。そこで本稿は、目に見えないコスト(特に人件費)を下げる、活動基準原価計算をご紹介します。

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見えるコスト削減よりも見えないコスト削減を

 コスト削減には様々な方法があります。

 中でも、簡単にコスト削減を行う方法は、見えている分かりやすいものから削減することでしょう。

 しかし、目に見えるコスト削減を実行しても、さほどの効果を見いだせない場合も多々あります。

 一番分かりやすいのは、会社最大の固定費にして、大きなキャッシュアウトを伴う人件費の削減です。

 ところが、人件費を詰めるだけ詰めると、会社が収益を生み出すために必要なリソースまで削ってしまう現象が起きてしまいます。

 そんな時に大事なのが、物品などの見えるコストとは違う、見えないコストを把握することです。

 例えば、ある商品を安く買う行為は、一見するとコスト削減のように見えます。

 しかし、実際のところ、その商品を100円安く買うために、時給1000円の従業員が一時間掛けて価格交渉していては、トータルとして見るとコスト削減とは言えず、本末転倒甚だしいところとなってしまいます。

 ならば、価格交渉に当たる人間に同じ人件費を支払うにしても、時間あたりの生産性を上げて、他の業務も行ってもらうほうが、コスト削減につながるのではないでしょうか?

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見えないコストの削減に役立つ「活動基準原価計算」とは?

 生産性の低い人件費をはじめ、見えないコストは可視化するのが非常に難しいものです。

 しかし、これを可視化する手法があります。

 それは、活動基準原価計算というものです。

 このコスト削減に役立つ原価計算は、英語の頭文字(Activity Based Costing)をとってABCとも呼ばれます。

 活動基準原価計算はもともと、製造現場での原価計算に使われるものでしたが、今では経営におけるコスト削減手法の一つとして普及しています。

 具体的にどういったものかというと、製造物に関わる間接部門の業務を細かく分け、その単位ごとに単価と回数を調べて、原価に反映させるというものとなっています。

 これを、製造物に関わる業務以外にも当てはめてみるというわけです。

 活動基準原価計算を活用して、どのようにコスト削減が出来るか、以下具体例を出して考えてみましょう。

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総務部の事務用品手配にかかる見えない費用をコスト削減せよ

 例えば、総務部などにおける社内の事務用品手配について、活動基準原価計算により人件費算出を行ってみます。

 総務部の担当者に、各部門からメールで事務用品の手配依頼がくるとします。

 この際、担当者はメールの内容を確認し、とりまとめ用のEXCELシートに受付日、部門名、依頼の物品名などの項目を記入し、発注担当者に資料を回しています。

 この一連の作業に掛かる時間が1分だとすると、一時間あたり60件の作業が可能です。

 担当者の人件費を一時間あたり3,000円だとすると、1件あたりのコストは50円、ということになります。

 一週間に5時間をこの作業へ費やせば、トータルの人件費は15,000円かかります。

 月間で6万円、年間ではなんと72万円の人件費がかかっている計算になります。

 活動基準原価計算を用いると、これら見えないコストがあぶり出されます。

 コストがどれくらいかかっているか把握出来れば、あとは、月間3万円でこのコストを外部委託する、作業時間を週間2.5時間に削減するツールを導入する、などの選択肢を用意し、短時間のうちに実行することで、見えないコストを半分に下げることが可能になります。

 こういった計算を作業ごとに積み上げることで、業務全体に掛かる見えないコストを可視化し、算出することができるというわけです。

 活動基準原価計算は、営業やマーケティングの場面にも、応用して活用することが可能です。

 一度、貴方の顧問税理士と相談しながら、導入することを検討してみてはいかがでしょうか?

コスト削減
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節税 研究所

中小企業のおっさん社長です。

人生の緩やかな下り坂を、あくまでも安穏たる状態で下りんとするも、空気の読めない当サイト編集部に無理やり誘われ、不本意ながら参加と相成りました。

納税という義務を果たしつつ、持続のための資金を確保したい。

実証確認中の節税ハックや、気になったマーケティング戦略について、徒然なるままに言の葉で連ねていきます。

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