個人事業主が法人成りするなら年内がオトクな理由〜消費税編

 個人事業主が法人成りすると、税制の優遇をはじめとした様々なメリットを享受することが可能になります。個人事業主で、もし今年売上が1,000万円を超えた人には、ズバリ年内12月31日までに法人成りすることをお勧めします。年内であれば、法人へ資産を引き継いだ時に発生する消費税を支払わず、大幅な節約を実現することが可能だからです。

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法人成りを考えるならズバリ年内12月31日まで

 個人事業を会社組織に変更することを「法人成り(ほうじんなり)」といいます。

 事業が軌道にのって売上が伸びてきたり、利益が増えてきたりした場合、事業を会社にすることで様々なメリットを受けることができます。

 例を挙げると以下の通りです。

  • 昨年の売上(今年ならば平成27年)が1,000万円を超えていれば、2年ほど消費税の支払いを先送りできる。
  • 収入の区分を変える(事業所得から給与所得)ことで所得税の金額を下げることができる。
  • 事業の経費の幅が広がる。
  • 銀行などからお金を調達しやすくなる。

 など、色々と利益対策・節税対策・資金対策を有利にすることができます。

 そして本稿は「うちも売上が安定してきたので、来年の確定申告が終わったら会社にしようかなぁ」と考えている方へメッセージを贈りたいと思います。

 ズバリ、事業を会社にするなら年内中にやってしまった方がオトクですよ!

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年内中の法人成りがお得になるのはなぜか?

 個人事業の場合、所得税の対象になる期間は毎年1月1日から12月31日までと決められています。

 この期間を「課税期間」と言います。

 個人の場合には、所得税も消費税も贈与税も、この1月1日から12月31日までの課税期間が基本となります。

 対して法人(会社)については、自分たちで決めた期間を課税期間とすることが可能です。

 1年を超えないことが条件となりますが、いつでも決算期を決めることができるのです。

 大企業の様に3月31日を決算日にしても良いですし、自分自身の誕生日(7月11日とか)を決算日にしても構いません。

 ちなみに、個人的には、あまり月の途中の日を決算にすると面倒くさいことが多いので、月末にするのをオススメします。

 例えば、9月決算にした場合で1年間を課税期間として定めれば、毎年10月1日から翌年の9月30日までを1つの課税期間として処理することになります。

 実は法人成りをする場合、個人と会社の課税期間のズレによって、様々な税金対策をすることができます。

 今回はそのうちの1つである「事業資産の引き継ぎにかかる消費税」についてご説明しようと思います。

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年明けの資産の引き継ぎは「資産の売却」とみなされる

 平成27年に消費税の対象となる売上(課税売上)が1,000万円を超える場合、平成29年以降に発生した課税売上については、消費税を納める義務があります。

 このことを「消費税の納税義務」といいます。

 ただ、この消費税の納税義務を負うのは、あくまで個人事業としての個人です。

 個人事業を法人成りしても、新しく作る法人には消費税の納税義務はくっついてはきません。

 ですので、だいたい2年間程度は、消費税の納税義務を先送りにさせる効果があるのです。

 例えば年間1,500万円程度の飲食店の場合、年間の消費税は平均で約30〜40万円ほどですので、2年とすれば80万円弱はトクすることになります。

 これを「消費税の益税」と言います。最近ニュースでよく耳にする方も多いことでしょう。

 「じゃあ、来年から法人にすればいいんじゃない」と思われるかもしれませんが、実は年内に法人にしておいた方が良い理由があります。

 多くの場合、個人事業で使っていたクルマや道具、設備などを新しく作る法人に引き継いだりします。

 外から見ただけでは、「個人事業の資産を法人に引き継いだ」だけにしか見えませんが、税金的な考えでは「個人事業者が新しい法人に資産を売却した」とみなされてしまうのです。

 もし、法人を平成28年に設立したとすると、個人事業から法人への資産の売却も平成28年に行われたとみなされます。

 事業資産の売却も消費税の対象となる取引です。

 すなわち本来の売上でも何でもないのに、消費税を納めなければならないのです。

 例えば事業で使っていた車が300万円、機械工具が200万円だったとすれば、約37万円も消費税が発生してしまいます。

 結構大きい金額ではありませんか?

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年内中であれば消費税の課税は全く関係無し!

 対して、年内中(平成28年)に法人を設立して事業を引き継いだとしたらどうでしょう。

 事業資産を引き継ぐ行為は、消費税の対象となります。

 ただし、まだ平成28年に個人事業主である場合は、消費税を納める義務がありません。

 従って、同じ取引をしたにもかかわらず、消費税が発生することは無いのです。

 最初に述べたように、法人の課税期間は自分自身で決められます。

 11月から12月に会社を設立して、年内中に事業を引き継ぐことも可能です。

 また、決算月は後で自由に変えられますので、とりあえず法人成りして2年間消費税のメリットを享受した後、決算期を変更することも可能です。

 12月31日に引き継いだ場合と翌年の1月1日に引き継いだ場合と、たった1日しか違わないとしても、納めるべき税金が大きく変わってきます。

 もし、消費税を理由に法人成りを考えている方は、この日程に注意してください。

 特に設備関係が多い飲食店や理美容店、運送業や建築業の方は、引き継ぐ資産も多いので影響も大きいです。

 税理士の中でも、あまり消費税に詳しくない人は「年明けにやればいいんじゃない」とか、平気で言ったりしますから。

 法人の設立を考えるのであれば、ある程度税金のメリットなどを説明できる専門家に相談することを心がけましょう。

 あっ、私も詳しい1人なのでぜひお気軽にお問い合わせくださいね!

節税
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鈴木 一彦

鈴木一彦 プロフィール

◆保有資格

税理士、行政書士

◆モットー

「走る税理士」 それが私の別名です!

趣味はマラソンとトレイルランニング。
時間を見つけては、海に山に走りに出かけています!
今の目標は「日本百名山をトレイルランで走破」すること。
壁は高ければ高い方が挑み甲斐があるというものです。

私は生まれも育ちも小田原です。
愛着と思い入れのあるこの地で事務所を構えております。
神奈川県西地域が魅力ある場所になるためにチカラを注いでいます!

私は税理士や弁護士などの「先生商売」と呼ばれるお堅いイメージを無くすことをモットーとしています。

我々のような専門家は、もっとみなさまにとって身近な存在であるべきなのです。
困った時、助けてほしい時に気軽に何でも相談できるような、そんな存在になりたいのです。

一人で悩んでいても、なかなか答えが出てくるものではありません。

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◆経歴

昭和50年7月 神奈川県小田原市生まれ

平成6年3月 神奈川県立小田原高校卒業

平成10年3月 法政大学経営学部経営学科卒業、神奈川県秦野市の税理士事務所で勤務
(法人税申告300件、個人確定申告800件、相続税申告20件以上を担当)

平成23年12月 第61回税理士試験合格(簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法、相続税法)

平成24年3月 東京地方税理士会平塚支部にて税理士登録

平成26年3月 税理士法人を退社し、神奈川県小田原市にて鈴木一彦税理士事務所を開業

平成26年7月 経済産業大臣により経営革新等認定支援機関に登録される

平成26年8月 行政書士として登録(神奈川行政書士会小田原支部)

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