JR九州が上場にあたり変化させた財務体質と望まれる事業展開

企業分析

 10月25日にJR九州が東証一部に上場しました。公募価格2,600円に対して、初値は3,100円の値を付けて、上場企業としてまずまずのスタートを切ったと言えそうです。今回の上場にあたり、JR九州は民営化時から保有してきた資産の減損処理を一気に行いました。その背景には苦戦している鉄道部門の存在があります。

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JR九州が東証一部上場で評価はまずまずに

 10月25日にJR九州が東証一部に上場しました。

 公募価格2,600円に対して、初値は3,100円の値を付けて、上場企業としてまずまずのスタートを切ったと言えそうです。

 さて、今回の上場にあたり、JR九州の財務体質が大幅に変わっていますので、今日はこの点に注目したいと思います。

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JR九州が上場にあたり一気に行った減損処理

 まず、貸借対照表(B/S)について着目すると、総資産が大幅に減少しました。

 同社の有価証券報告書から引用します。(以下、本記事の引用元はすべて上記になります)

 経営安定化基金資産、経営安定化基金評価差額金が大幅に減少し、見合いで貸付、金銭信託等が大幅に減少しています。

 経営安定化基金とは、こちらをご覧いただければと思いますが、民営化する際に赤字路線を抱える各社に対し、いわゆる持参金として交付されたものです。

 上場にあたり、国からの持参金を保持し続けるのは具合が悪く、以下のような処理をしたのでしょう。

***以下、引用***

節約社長

***引用、ここまで***

 この際に、経営安定化基金から得られるキャッシュ・フローをベースに減損処理を見送っていたものと思われますが、収入がなくなるため、一気に減損処理をかけています。

 これにより、JR九州の直前期決算は大幅な赤字になりました。

 減損損失は5,200億円以上、売上が3800億円弱の企業でこれが行われたわけです。

 結果、当面、減価償却の負担が減少し、鉄道部門の業績がよくなる、というのが以下の説明です。

 しかし、これは新たに投資をする固定資産には影響がないため、長期的には鉄道部門が苦しいことは間違いありません。

***以下、引用***

節約社長

***引用、ここまで***

上記で説明したPLは以下のとおりです。

***以下、引用***

節約社長

***引用、ここまで***

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今後は鉄道以外の不動産事業が要となっていく

 鉄道部門が苦戦していることは、以下のセグメント情報でも分かり、JR九州は今後、不動産業を中心に稼いでいく必要が生じるでしょう。

 ものすごい金額が動き、しかも熊本の地震が上場直前期に起きるなど、大変ななかで実現した上場です。

 そのご苦労に敬意を示すとともに今後の同社の発展を祈念します。

***以下、引用***

節約社長

***引用、ここまで***

Photo credit: beve4 via VisualHunt / CC BY

企業分析
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大原達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事・アルテパートナーズ株式会社代表取締役として、M&Aを手掛ける公認会計士です。

BBT大学、法政大学院イノベーションマネジメント科の教員も兼任しております。

大企業だけではなく中小企業にとっても、ユーザーフレンドリーな会計業界を、世界中に広めることが目標です。

M&Aの悩み(会社や事業を売りたい/会社や事業を買いたい/小規模M&A投資を検討している)があれば、お気軽にお問い合わせください。

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経営者のための実践ファイナンス

【現職】
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテ監査法人代表社員
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師
ビジネス・ブレークスルー大学大学院准教授
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
PT. SAKURA MITRA PERDANA Director

【職歴】
1998年10月 青山監査法人プライスウオーターハウス入所
2004年1月 大原公認会計士事務所開設
2004年6月 株式会社さくらや 監査役
2006年1月 株式会社ライトワークス リスクコンサルティング部ディレクター
2007年4月 ビジネス・ブレークスルー大学大学院講師
2008年4月 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現任)
2008年4月 アルテ公認会計士共同事務所開設 代表パートナー
2008年6月 日本マニュファクチャリングサービス株式会社 監査役(現任)
2009年4月 アルテパートナーズ株式会社設立 代表取締役(現任)
2010年7月 アルテ監査法人設立代表社員(現任)
2010年8月 日本M&Aアドバイザー協会 理事
2014年10月 日本M&Aアドバイザー協会 代表理事(現任)
2016年4月 ビジネス・ブレークスルー大学准教授(現任)

【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、日本税理士会、日本CFO協会

【資格】
公認会計士、税理士、 JMAA認定M&Aアドバイザー (CMA)

【その他】
ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA/経営管理修士(専門職) 日本CFO協会主任研究員(2006年)

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