売上15億で利益が出ていない企業を30億円で買収した事例がM&Aのお手本なワケ

事業譲渡

 日本の中堅・中小企業を対象とした独立系M&Aアドバイザリー・仲介会社であるM&Aキャピタルパートナーズが、同業のレコフを買収すると報道されています。ところがレコフの売上は約15億強で利益もほぼ出ておらず、この買収にM&Aキャピタルパートナーズは30億円を費やしました。それでもこの事例がM&Aのお手本と言える理由を解説します。

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M&Aキャピタルパートナーズがレコフを買収

 日本の中堅・中小企業を対象とした独立系M&Aアドバイザリー・仲介会社であるM&Aキャピタルパートナーズが、同業のレコフを買収すると報道されています。

 概要については、以下の日経新聞のリンクによると、以下のとおりです。

 参照:M&A仲介のレコフ、M&Aキャピタル傘下に :日経新聞2016年10月24日

  • ・M&Aキャピタルパートナーズが、レコフ、その関係会社のレコフデータの100%議決権を約30億円(増資含む)で買収する。
  • ・2016年3月期の売上高はレコフが14億2911万円で、レコフデータが1億7215万円。

 これ…キターーーーーーとか言いたいです。場違いでスミマセン。

 というのも、今回のM&Aは非常に理想的な形で行われたものです。

 その理由をご説明しましょう。

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M&Aキャピタルパートナーズはなぜ赤字企業を30億円で買収したのか?

 対象会社2社の業績は記事だけですと不明でしたので、M&Aキャピタルパートナーズのリリースから引用しておきます。

 2016年3月期の売上高は、レコフが14億2911万円で、レコフデータが1億7215万円であり、最終利益は2社あわせてほとんど出ていません。

 参照:株式会社レコフ及び株式会社レコフデータとの経営統合及び資金調達に関するお知らせ

 売上15億円の利益が出ていない企業を30億円で買収する。

 皆さんの頭には??がたくさん浮かんでいるかもしれません。

 特に弁護士、会計士などの専門家の多くは懐疑的な目をむけるでしょう。もちろん成功するかどうかはやってみないと分かりません。

 しかし、私は2つの理由でこの買収を素晴らしいと評価します。

 1つ目は、レコフの実績です。

 レコフは日本のM&Aアドバイザリーサービスの老舗で、大手企業と長い付き合いがあり、また信用力が抜群です。

 2つ目として、それにしても買収金額が高いのではないか、という懸念もあります。

 しかし、買い手であるM&Aキャピタルパートナーズは手元のキャッシュが40億円以上あるため、借入れをすることなく30億円の支払いが可能です。

 しかも、純資産が30億円あり、万一、この買収によって1円も稼げず30億円がパーになったとしても、会社が潰れるようなことはありません。

 企業の財務状況に鑑みても、今のタイミングだからこそできたM&Aなのです。

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M&Aキャピタルパートナーズはレコフの看板を手に入れた

 M&Aはタイミングと、万一、失敗したときにそれだけで会社が傾かないことが、とても大切だと思っています。

 しかも老舗のノウハウと看板を手に入れられる、またとないチャンスだったはずです。

 思いきった策をとったM&Aキャピタルパートナーズに拍手を送ります。

 M&Aを自社でやっていこうとされる企業の皆様にとって、参考にしていただきたい事例の1つといってよいでしょう。

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大原達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事・アルテパートナーズ株式会社代表取締役として、M&Aを手掛ける公認会計士です。

BBT大学、法政大学院イノベーションマネジメント科の教員も兼任しております。

大企業だけではなく中小企業にとっても、ユーザーフレンドリーな会計業界を、世界中に広めることが目標です。

M&Aの悩み(会社や事業を売りたい/会社や事業を買いたい/小規模M&A投資を検討している)があれば、お気軽にお問い合わせください。

運営サイト:
経営者のための実践ファイナンス

【現職】
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテ監査法人代表社員
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師
ビジネス・ブレークスルー大学大学院准教授
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
PT. SAKURA MITRA PERDANA Director

【職歴】
1998年10月 青山監査法人プライスウオーターハウス入所
2004年1月 大原公認会計士事務所開設
2004年6月 株式会社さくらや 監査役
2006年1月 株式会社ライトワークス リスクコンサルティング部ディレクター
2007年4月 ビジネス・ブレークスルー大学大学院講師
2008年4月 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現任)
2008年4月 アルテ公認会計士共同事務所開設 代表パートナー
2008年6月 日本マニュファクチャリングサービス株式会社 監査役(現任)
2009年4月 アルテパートナーズ株式会社設立 代表取締役(現任)
2010年7月 アルテ監査法人設立代表社員(現任)
2010年8月 日本M&Aアドバイザー協会 理事
2014年10月 日本M&Aアドバイザー協会 代表理事(現任)
2016年4月 ビジネス・ブレークスルー大学准教授(現任)

【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、日本税理士会、日本CFO協会

【資格】
公認会計士、税理士、 JMAA認定M&Aアドバイザー (CMA)

【その他】
ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA/経営管理修士(専門職) 日本CFO協会主任研究員(2006年)

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