70代で37%、60代は5.4%…検討タイミングが遅すぎる日本の事業承継

事業譲渡

 群馬県における調査において、「70代社長の37%がM&Aを検討している」ということが報道されました。しかも、同報道によると60代でM&Aを検討している経営者は5.4%しかいません。70代で事業承継を検討し始めても、現実的には売り手があまりにも弱い立場に立たされます。事業承継を真剣に検討するなら60代手前からの売り先探しを始めるべきです。

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M&A検討中の経営者は70代で37%、60代で54%

 群馬県における調査において、「70代社長の37%がM&Aを検討している」ということが報道されました。

 大切なのが以下のグラフなので、引用します。

節約社長
上毛新聞ニュース:自社のM&A 70代社長の37%検討 群馬経済研調べ

 70代で37%という数字も低すぎて驚きですが、60代でM&Aを検討している人はほぼゼロに等しい5.4%しかいません。

 正直申し上げて、これで事業承継がうまくいくはずがありません。その理由は2つあります。

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70代でM&Aを検討するのが遅すぎる2つの理由

 理由の1つ目は、事業承継に向けたM&Aの検討開始が遅れれば遅れるほど、売り手に交渉力がなくなるからです。

 高齢になればなるほど、健康上の問題も増え、短期間に少ない選択肢の中から売却先を決めなければならない状況は、売り手側の経営者に不利な状況を作ります。

 それでも相手が見つかればよいほうで、以前の記事でもお伝えしましたが、「相手見つけてきてね。候補者10社位頼むわ!」といって相手候補が見つかるほど、まだ日本のM&A産業は成熟していません。

 円滑で円満な事業承継を真剣に考えるならば、お見合いするには少しでも時間があるに越したことがないのです。

 2点目の理由として、会社を他人に売れるような状態にするには時間がかかります。

 「経営管理や組織は自分の頭の中にあるから大丈夫だ。」と豪語される経営者は多いですが、まずこういった会社は売却できません。

 特に事業承継であれば、経営者はいなくなるわけですから、経営管理や組織が目に見える形になっていなければ、第三者がうまく経営を引き継げるはずがないからです。

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事業承継を考えるならば60代手前から真剣に検討を

 これら事業承継の現場で起きていることを考えれば、70代に入ってからではほとんどの場合は手遅れと言ってもよいでしょう。

 日本のM&A市場に、売り買い情報のリアルタイムなデータベースなど存在しませんし、売り手にあわせて1件1件買い手候補を地道にあたらなければ、事業承継を成立させることは出来ないのが現実です。

 事業承継を考えるのであれば、できるだけ60代手前から準備を始めるくらいがちょうどよいことを、読者の皆様には知っていただければ幸いです。

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大原達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事・アルテパートナーズ株式会社代表取締役として、M&Aを手掛ける公認会計士です。

BBT大学、法政大学院イノベーションマネジメント科の教員も兼任しております。

大企業だけではなく中小企業にとっても、ユーザーフレンドリーな会計業界を、世界中に広めることが目標です。

M&Aの悩み(会社や事業を売りたい/会社や事業を買いたい/小規模M&A投資を検討している)があれば、お気軽にお問い合わせください。

運営サイト:
経営者のための実践ファイナンス

【現職】
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテ監査法人代表社員
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師
ビジネス・ブレークスルー大学大学院准教授
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
PT. SAKURA MITRA PERDANA Director

【職歴】
1998年10月 青山監査法人プライスウオーターハウス入所
2004年1月 大原公認会計士事務所開設
2004年6月 株式会社さくらや 監査役
2006年1月 株式会社ライトワークス リスクコンサルティング部ディレクター
2007年4月 ビジネス・ブレークスルー大学大学院講師
2008年4月 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現任)
2008年4月 アルテ公認会計士共同事務所開設 代表パートナー
2008年6月 日本マニュファクチャリングサービス株式会社 監査役(現任)
2009年4月 アルテパートナーズ株式会社設立 代表取締役(現任)
2010年7月 アルテ監査法人設立代表社員(現任)
2010年8月 日本M&Aアドバイザー協会 理事
2014年10月 日本M&Aアドバイザー協会 代表理事(現任)
2016年4月 ビジネス・ブレークスルー大学准教授(現任)

【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、日本税理士会、日本CFO協会

【資格】
公認会計士、税理士、 JMAA認定M&Aアドバイザー (CMA)

【その他】
ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA/経営管理修士(専門職) 日本CFO協会主任研究員(2006年)

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