民事再生法を申請する際に生じる4つのメリット・デメリット

経営

 民事再生法の申請が、2000年4月の施行から16年で遂に1万件を突破しました。突然の大きな貸し倒れ等が起き、キャッシュフローが急激に回らなくなる等のことがあれば、中小企業はすぐに回らなくなります。これを防ぐ民事再生法の手続きについて、本日はお話いたします。

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施行から16年で遂に民事再生法申請1万件突破

  2000年に民事再生法が施行されてから16年が経過し、先月には施行から16年を経て、申請件数がトータルで1万件を突破しました。

 実はここ数年の間、民事再生法の申請件数は減少し続けています。

 大型倒産の連鎖があった2001年(1019件)、リーマン・ショックで世界不況が起きた2008年(935件)と比較し、2015年は過去最低の247件しか、民事再生法の手続き申請がありませんでした。

 しかし、世界的な景気減速ムードや、疲弊する地方経済を踏まえると、いつ自分たちの企業がどうなるかはわかりません。

 特に、突然の大きな貸し倒れ等が起き、キャッシュフローが急激に回らなくなる等のことがあれば、中小企業はすぐに回らなくなります。

 その際に、会社を存続させる手段となり得るのが、民事再生法の適応申請です。

 今一度ここで、民事再生法の申請を行うメリットとデメリットを把握してみましょう。

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民事再生法を申請する4つのメリットとは?

 まずは、民事再生法の適応申請を行う4つのメリットを考えてみましょう。 

1)申請が認可されると債務は大幅に圧縮

 民事再生法の適用申請を行い、結果として再生計画が認可されると、90%前後の大幅な債務免除が実行されます。

 既存の事業で売上が継続的に立っているほど、債務免除は早期の会社再生に役立ちます。

2)従来の経営権を経営者が維持できる

 会社更生法に基づく破産手続きが行われると、原則として経営者が経営権を維持することはできません。

 対して民事再生法の申請が通った場合、従来通り会社経営権を維持して、会社の自主再建を遂行していくことが可能です。

 もっとも2008年以降は、会社更生法においても、一定の条件を満たした場合には、更生手続開始申し立て時の取締役を管財人として、引き続き業務の運営に当たらせる運用が行われ始めています。(しかしながら、例は少ない)

3)債権者の議決権で50%以上が認めてくれれば良い

 再生計画が認可されるためには、債権者集会の参加者において50%以上が賛成し、なおかつ総議決権の50%以上に満ちていれば、認可されることになっております。

 債権者は金融機関である割合が多く、ちゃんとした再生計画さえ立てられれば、民事再生法の申請で立ち直れる可能性が広がります。

4)短期間で再建の絵図を描ける

 民事再生の特徴の一つとして、冒頭でも申し上げましたように、債権債務の整理を迅速に行うことが可能になります。

 その時間は申請から再生計画の認可まで、半年程度で済みます。

 昨年の大型倒産で話題になったスカイマークも、確定債権総額が約1543億円と巨額でしたが、弁済額を約160億円程度に収めて、新たな再生計画の元、1年2ヶ月で再スタートにこぎつけました。

 民事再生法は、短期間で企業が再建する絵図を描く上で優れた法律です。

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民事再生法を申請する4つのデメリットとは?

 メリットがあるならば、デメリットがあることも忘れてはなりません。

1)申請の際にお金がある程度必要

 民事再生法を申請する際には、窓口となる弁護士への報酬や、裁判所に手続きを依頼する際に支払う予納金が必要になります。

 特に予納金は会社規模にも寄りますが、数百万円ほど必要になり、しかも費用は債権者への返済に充てられるなどして、戻ってくることは殆どありません。

 従って、キャッシュがないから民事再生を申請するのに、キャッシュが必要になる事態が生じます。

 つまり、アクセルベタ踏みで思い切り稼ぎながら、当分の間はキャッシュがきつい状態となります。

2)再建計画が認められないと最悪はドボン

 先述の通り再建計画は、債権者の一定割合が認める内容でなければなりません。

 もしも、再建計画が認められなければ、民事再生法の適用は否決されることになり、破産手続きに移行する可能性が生じます。

 この場合、現経営者が経営権を持ち続けることは困難です。

3)債務は圧縮されても消えない権利がある

 債務が大幅に圧縮されても、債務にひも付けされた抵当権や税金の請求権は消えません。

 経営者の自宅や会社の不動産にひも付いた抵当権を実行された場合、これを守り切れない場合があります。 

4)やっぱり信用は一度無くなるだろう

 民事再生法は、可能性のある企業が失敗しても立ち上がることを目的とした法律ですが、官報に民事再生企業であることを掲載されますし、代表者は5年程度の間、金融機関からお金を借りることが難しくなります。

 商売は顔で成り立っている場合が多いですから、見えない部分での信用失墜は免れません。

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債務は圧縮されても債権者や地元の感情に配慮

 自分の債務が免除されるということは、その一方で金銭を溶かした金融機関があることを意味し、支援してくれた人の顔を潰すことにも気を遣わねばなりません。

 ある程度の時間が経過するまで、これら関係者の感情に沿って、真摯に業務と向き合う必要があるでしょう。

 また、よくあるパターンとして、民事再生法の申請が認可され、すっかり身軽になったとおもいきや、散財してしまう方もいらっしゃいます。

 自分が背水の陣にいて、ここから必ず復活しなければならない立場にあることを、強く認識する必要があります。

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