節約 社長
松尾 順
松尾 順プロフェッショナル・マーケター - ジェネシスコミュニケーション

短期間で主婦にエコバッグを定着させた小売店側の心理的仕掛け

短期間で主婦にエコバッグを定着させた小売店側の心理的仕掛け
 心理学や行動経済学の研究によれば、人には「得をしたい」よりも、「損をしたくない」という「損失回避」の欲求を極めて強く持つことが判明しています。スーパーにエコバッグを持っていく主婦が急増した理由も、レジ袋有償化により、レジ袋代分のお金を損したくないという、損失回避傾向を巧みについたマーケティング策の一つです。

人は得するより損したくない欲求を根源に持つ

 人は、「得をしたい」という欲求だけでなく、逆に「損をしたくない」という欲求を併せ持っています。

 心理学や行動経済学の研究によれば、「得をしたい」よりも、「損をしたくない」という「損失回避」の欲求のほうが極めて強いことがわかっています。

 そして、この「損失回避傾向の高さ」をマーケティングに活用することで、対象顧客の高い反応を引き出し、売り上げ増につなげることができます。

 『セブン&アイ鈴木氏が経営学や経済学より心理学を活用したわけ』の記事では、5%消費税還元セールの大ヒットが、損失回避傾向を突いた巧妙なキャンペーンであることを解説しました。

 今回も、「損失回避傾向」の活用について、同じような身近な例を挙げましょう。

損失回避傾向を巧みに利用したレジ袋代金徴収

 資源の無駄使いと言われているスーパーの「レジ袋」削減策として、近年、消費者に対し、「エコバッグ」(マイバッグ)の持参が奨励されていますね。

 そこで、スーパー各社は、「エコバッグ」の持参という消費者行動を促進するため、各種施策を打ち出しています。

 ポイントカードを採用しているスーパーでは大抵、「エコポイント」などと呼ばれるポイントを付与していますね。

 エコバッグがあり、レジ袋が不要の場合には、「2ポイントあげますよ」といったもの。これは「得をする」というインセンティブです。

 一方、ポイントカードを採用していないスーパーでのエコバッグ促進策としては、おおむね以下の2通りがあります。
  • ・買い物代金から2円程度割り引く(割引)
  • ・レジ袋一個当たり2円~10円を代金としてもらう(代金徴収)
 さて、あなたが一消費者としてスーパーに買い物に行くとき、どの施策(ポイント付与、割引、代金徴収)の場合に、最もレジ袋を持参したいという気持ちになりますか?

 この回答は明らかでしょう。多くの方が、「代金徴収」の場合と答えたのではないでしょうか。

 実際、レジ袋の代金を徴収しているスーパーにおいては、来店客の5割~9割がエコバックを持参し、レジ袋を辞退しているそうです。

 ちなみに、「ポイント付与」について、たかだか2ポイント程度では、エコバックをわざわざ持参する気にはならないよ、とお感じになった方もいらっしゃるでしょう。

 では、仮に10ポイント(=10円)付与してくれるスーパーがあったとしたらどうでしょうか?それでもやはり、「たかだが10ポイントか」と感じるのではないでしょうか?

 あるいは、「割引」について、仮にエコバッグ持参すると10円割引になったとしても、やはり「わずか10円くらい割り引かれてもなあ・・・」と感じるのではないでしょうか。

 一方で、レジ袋1個当たり、せいぜい「2-5円」程度に過ぎないと頭ではわかっていても、やはり「払うのは不愉快だ」という感情を抑えることはできないのではないでしょうか?

損失回避傾向を理解して顧客に攻めの提案を!

 スーパーの中にはレジ袋の有料化によって、競合スーパーに客が奪われるのではないか?という懸念があり、なかなか有料化に踏み切れないという実態があります。

 しかし、天然資源の無駄使いを防ぐのはグローバルな課題であり、レジ袋有料の法制化を採用する国が増えつつあります。

 「損失回避傾向」の視点からも、レジ袋の代金徴収が、最もレジ袋利用の削減効果が高いのは明らかなので、日本での法制化も近い将来、確実に行われるでしょう。

 実は、「損失回避傾向」は、上記のような消費者行動だけでなく、社会や企業の様々な意思決定にも大きな影響を与えています。今後も折に触れて紹介していきますね。

2016年5月20日

損失回避傾向 レジ袋 スーパー ポイント制度 マーケティング

松尾 順
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